目次
はじめに
なんとなく疲れやすい、むくみやすい、血圧や血糖値が気になる、そんなサインの陰で、実は「腎臓」が静かに悲鳴を上げているかもしれません。

腎臓は老廃物をろ過し、水分や塩分のバランスを整える生命維持の要ですが、塩分や糖分、脂質の多い食事や加工食品、甘い飲み物などで、知らないうちに負担をかけ続けてしまいます。
自覚症状が出たときには、もうかなり機能が落ちていたというケースも多く、今回は透析を遠ざけ、腎臓を長く元気に保つための食べ方や水分の摂り方、間食や調味料の選び方をわかりやすくまとめました。

食物繊維の取り入れ方、カリウムやリン、亜鉛や糖質とのつき合い方など、今日からできる具体的なコツを紹介していきます。
健康診断でクレアチニンやeGFRが気になり始めた方も、今のうちからケアしておきたい方も、一緒に「腎臓がよろこぶ食卓」を育てていきましょう、小さな見直しでも腎臓の未来は大きく変えられます。

腎臓を守るための食事方法
腎臓は体の老廃物をろ過し、水分や塩分のバランスを整える重要な臓器ですが、食生活の乱れや過剰な塩分・糖分・脂質の摂取は腎臓に大きな負担をかけます。
腎臓は「沈黙の臓器」、自覚症状がないまま機能が低下していくことも多く、食事の選び方が健康寿命を左右すると言っても過言ではありません。

近年では、塩分過多や過剰なタンパク質摂取、加工食品の多用が腎機能を弱める要因として注目される一方で、適度なタンパク質や良質な脂質、食物繊維を取り入れることは、腎臓の働きを支える重要なポイントです。
血圧や血糖値の安定、体重管理にもつながり、腎臓を守る土台となります。

腎臓にやさしい食べ方や食材選びの基本から、日常で取り入れやすい工夫、外食や間食の注意点になっていきます。

毎日の食卓を少し工夫するだけで、腎臓の負担を減らし、透析を遠ざけることが可能になり、腎臓を長く元気に保つために、今日から始められる食事習慣を一緒に見つけていきましょう。
腎臓の食事のメインは食物繊維
腎機能が低下すると、日々の食事管理はよりシビアになります。
腎臓は、体の老廃物や余分な塩分・水分を尿として排出する役割を担っており、腎機能が落ちると体に毒素や塩分がたまりやすくなります。

そのため、塩分やタンパク質、カリウム、リンなどの摂取量を細かく調整しながら腎臓への負担を減らす必要があり、そんな食事療法の中心に位置づけたいのが「食物繊維」です。

食物繊維を豊富に含む食品は、腸内環境を整えて老廃物の排泄を助け、腎臓の負担を和らげてくれ、野菜や海藻、豆類、果物、きのこ類などが代表的です。
その中でも腎臓にやさしい低カリウムの野菜としておすすめなのが玉ねぎです。
玉ねぎには血液をサラサラに保つアリシンや強力な抗酸化作用をもつケルセチンが含まれ、腎臓の血管を守り、玉ねぎに含まれるオリゴ糖は腸内の善玉菌を増やし、腸内環境の改善と腎臓の負担軽減に役に立つのです。

豆類も腎臓の食卓に積極的に取り入れたい食材、大豆やレンズ豆などには植物性タンパク質が豊富で、動物性タンパク質に比べて腎臓への負担が少ないのが特長になります。
さらにビタミンやミネラル、大豆由来のポリフェノールがインスリン感受性を高め、糖尿病の予防や糖尿病性腎症の進行を抑える効果も報告されています。
食物繊維には不溶性と水溶性の2種類があり、不溶性は腸を刺激して便通を改善しますが、腎機能が低下している場合は腸内ガスがたまりやすいこともあります。

重視したいのは水溶性食物繊維で、水溶性は血糖値やコレステロール値の上昇を抑え、腸内で善玉菌を育て、腎臓の負担を和らげる効果が期待できるのです。
水溶性食物繊維を多く含む食品には、わかめや昆布などの海藻類、こんにゃく、オクラ、モロヘイヤ、りんごなどがあり、海藻類に含まれるフコイダンは、抗炎症作用や免疫調整作用があり、腎臓の健康維持にとって心強い味方です。
また、野菜にかけるドレッシングにも工夫が必要になり、市販のドレッシングには塩分や糖質、添加物が多く含まれている場合があるのです。

お酢やリンゴ酢をベースにした手作りドレッシングを活用すれば、余計な塩分や糖分を抑えながら味付けが可能になります。
腎臓に負担をかけてしまう食べ物
腎臓を守る食事がある一方で、腎臓に負担をかけてしまう食べ物も少なくありません。
忙しい日や帰宅が遅くなったとき、つい手に取りがちな総菜の揚げ物やジャンクフードは要注意で、これらに使われる油は家庭で調理する油と異なり、何度も使い回されることで酸化が進んでいます。

酸化した油は、体内で活性酸素を発生させ、血管や腎臓の細胞を傷つける原因になり、さらに業務用の油は質が良くない場合も多く、腎臓にかかる負担は家庭で調理した揚げ物よりも大きくなります。
また、加工食品も腎臓をいたわる上では控えたい食品の代表になり、ハムやソーセージ、ベーコン、レトルト食品、インスタントラーメンなどは塩分が多く、食べれば食べるほど腎臓のろ過機能に大きな負担をかけます。

そして、見逃せないのが「無機リン」で、無機リンは食品の保存性や見た目をよくするために添加されることが多く、体内に吸収されやすい性質があります。
リンは、骨や歯に必要なミネラルですが、過剰に摂取すると血液中のリン濃度が上昇し、腎臓が余分なリンを排出しようと働き続けるため、腎機能の低下を早める原因になります。
こうした食品を食べ続けると、腎臓の機能が弱まるだけでなく、痛風や尿路結石といった激しい痛みを伴う病気を引き起こす危険も高まります。

痛風は尿酸が結晶化して関節に炎症を起こす病気で、腎臓が尿酸を十分に排出できないことが一因で、尿路結石も同様に、腎臓のろ過や尿の濃縮がうまくいかないことで発症しやすくなります。
どうしても市販の総菜を利用する場合は、揚げ物や加工肉よりも蒸し物や焼き魚、塩分控えめの惣菜を選ぶなど、負担を減らす工夫が欠かせません。
調味料の塩分には要注意を
腎臓が悪化すると、医師から厳しい塩分制限を指示されることがありますが、これは腎臓病の人だけに限った話ではありません。
健康な人でも日頃から塩分を控えることは腎臓を守る基本で、塩分を摂り過ぎると血圧が上がり、腎臓の細い血管への負担が増加、長期的には腎機能の低下や慢性腎臓病のリスクを高めます。

日本人の食生活では特に調味料からの塩分が多く、食材そのものよりも無意識に使う調味料から6〜7割の塩分をとっているとも言われています。
しょうゆ、味噌、ポン酢、ソース、ノンオイルドレッシングなどは調味料の代表格、これらは少量でも塩分1gに相当し、かけすぎるとあっという間に一日の適正摂取量(6g未満が目安)を超えてしまいます。

例えば、しょうゆ大さじ1杯で約2.6gの塩分が含まれ、何気なく使うだけで腎臓に負担がかかります。
減塩タイプの商品であっても油断は禁物で、減塩しょうゆや減塩味噌を多めに使えば、結果として通常の調味料と同じだけの塩分を摂取してしまう可能性があるのです。

さらに、減塩商品には塩分を控える代わりに糖質や脂質、保存料やうま味調味料などの添加物が加えられていることもあります。
これらは血糖値の上昇や中性脂肪の増加を招き、かえって腎臓に負担をかけることになりかねません、減塩だからと安心してかけすぎることは、腎臓にとって二重のリスクとなります。

塩分を無理なく減らすためには、調味料の使い方を見直すだけでなく、食材そのものの味を生かす工夫が重要です。
出汁をしっかりとることで旨味を引き出せば、塩を多く使わなくても満足感のある味となり、昆布やかつお、煮干しのだしは、ミネラルやアミノ酸も含みながら塩分を抑えるのに役立ちます。
香辛料やハーブ、レモンやゆずなどの柑橘類も効果を発揮し、これらは香りや酸味が料理の味を引き締め、塩分控えめでもおいしく感じさせてくれます。
お酢やリンゴ酢などの酢類は、血圧を下げたり、血糖値の上昇を抑えるなど体にうれしい効果も報告されています。

日常的に塩分を意識して控えることは、腎臓病の予防や進行抑制だけでなく、高血圧や動脈硬化、心臓病の予防にもつながり、日々の小さな工夫で腎臓への負担を減らしていきましょう。
亜鉛不足を解消していく
亜鉛は、体内におよそ2g存在する必須ミネラルで、主に皮膚や骨、肝臓、筋肉などに含まれています。
わずかな量ながらその働きは多岐にわたり、味覚や骨格の形成、糖代謝、新陳代謝、免疫機能など心身の健康を維持するうえで欠かせない栄養素ですが、現代の食生活では加工食品や外食が多く、亜鉛の摂取量が不足しがちといわれています。

亜鉛が不足するとさまざまな不調が現れ、代表的なのが味覚異常で、塩味や甘味を感じにくくなり、濃い味を好むようになります。
その結果、塩分の摂り過ぎにつながりやすく、腎臓に余分な負担をかけることになります。
さらに亜鉛はインスリンの分泌にも関与しているため、不足すると血糖値をうまく下げられず、糖代謝の乱れや糖尿病のリスクが高まります。

また、鉄とともに赤血球の生成を助ける働きもあるため、欠乏が続くと貧血の原因にもなり、これらはすべて腎臓病の悪化因子とも密接に関係します。
亜鉛の1日の推奨摂取量は、成人男性で11mg、女性で8mg程度が目安とされています。

亜鉛を多く含む食材には、牡蠣、牛肉、豚レバー、かぼちゃの種、ナッツ類、豆類などがあり、牡蠣は亜鉛含有量が群を抜いており、少量で効率よく補えます。
ただし、腎臓病の人は、高リンや高カリウム食品の摂取に注意が必要で、牡蠣やレバーなどはリンが多いため、摂り過ぎは腎臓への負担となり、豆類やナッツもカリウムやリンを含むため、調理法や量に工夫が求められます。
食材から必要量を補うのが理想ですが、食欲が落ちていたり制限食を続けている場合は、食事だけで必要量を満たすのが難しいこともあります。

そうしたときはサプリメントで補う方法もありますが、自己判断での大量摂取は避け定期、過剰な亜鉛は銅など他のミネラルの吸収を妨げ、逆に健康を損なう恐れがあります。
腎臓病の人は特に体内バランスの影響が大きいため、担当医や管理栄養士と相談しながら、自分に合った摂取量と方法を決めることが大切になっていきます。
腎機能が低下した際の間食は
腎機能が低下したからといって、間食を一切やめなければならないわけではありません。
大切なのは食べるものを慎重に選び、できるだけ腎臓に負担をかけない工夫をすることで、適切な間食は不足しがちな栄養素を補い、血糖値の安定や食べ過ぎの防止にも役立ちます。

まず、おすすめしたいのがヨーグルト、ヨーグルトに含まれる乳酸菌は腸内環境を整え、腸内で有害物質が増えるのを防ぎます。
ただし、加糖タイプや甘味料入りは糖質過多となりやすく、腎臓や血糖値に負担をかけるため避けていき、トッピングにも注意し、カリウムが多いバナナなどはなるべく控えていきましょう。
そしてりんごは、腎臓にやさしい果物の代表格、りんごには、ペクチンや水溶性食物繊維が豊富に含まれ、腸内環境を整えるだけでなく、血圧の安定や脂質異常症の改善など血管のケアにも役立ちます。

皮ごと薄く切って少量ずつ食べることで、満足感を得ながら食物繊維を効率よく摂取できます。
トッピングとしてシナモンを少量ふりかけるのも効果的で、シナモンには、血糖値の上昇を抑える働きに加え、研究で腎臓を保護する作用があると報告されています。

ミックスナッツも優れた間食になり、ナッツには良質な脂質、ビタミンE、ミネラルが含まれ、普段不足しがちな栄養素を補うことができます。
選ぶときは必ず無塩で素焼きのものを選んでいき、塩分や味付けされたナッツは腎臓への負担を増やしてしまうので、少量ずつよく噛んで食べると満腹感が得られ、血糖値の急上昇を防ぐ効果もあります。

寒天もおすすめの食材の一つになり、寒天は水溶性食物繊維が豊富で、腸内環境の改善や血糖値の緩やかな上昇に役立ちます。
水分を多く含むため少量でも満腹感が得られ、カロリーが低い点も魅力です。自宅で簡単に作れるので、甘さ控えめのフルーツや少量の黒蜜を添えるなど、好みに合わせて工夫をしていきましょう。
腎臓を守っていく水分管理を
腎臓は、体内の水分や塩分のバランスを保ち、老廃物を尿として排出する重要な役割を担っていますが、腎臓そのものは脱水に弱く、体が水分不足になると血流が減り、腎臓への血液供給が低下して機能が損なわれやすくなります。
喉が渇いたと感じるときには、すでに体は水分不足に傾いていることが多く、各臓器では気づかないうちに水分が足りなくなっている場合もあります。

そのため「喉が渇いていないから大丈夫」と考えず、こまめに水分を補給することが腎臓を守る基本となります。
1日の水分摂取量の目安は、体重や活動量、季節によっても異なりますが、おおよそ体重1kgあたり30〜40mlが目安とされ、例えば体重60kgなら1日1.8〜2.4リットルが理想的です。

ただし、食事からも水分は摂取でき、野菜や果物、汁物、ごはんなどにも水分が含まれており、通常の食生活で1日およそ1リットル前後の水分を食事から自然に取っています。
そのため、飲み物として意識的に摂る量は1〜1.5リットルほどが実際の目安となります。
水分補給には、水や麦茶、カフェインの少ないハーブティーなどが適しており、コーヒーや濃い緑茶、アルコールなどは利尿作用が強く、かえって脱水を招くことがあるため注意が必要です。

また一度に大量に飲むより、1回コップ1杯程度を数回に分けて飲むほうが体に吸収されやすく、腎臓への負担も少なくなります。
起床後や入浴後、運動後などは特に体が水分を失っているため、意識して補給しましょう。

慢性腎臓病の方や高血圧、心不全を伴う方では、医師から水分制限が指示される場合があるので、その場合は、自己判断せず、指示された範囲内で摂取することが大切になります。
腎臓の過負荷になる飲み物も
腎臓の健康を守るには食べ物だけでなく、飲み物にも十分な注意が必要です。
飲み物は、固形の食べ物よりも体内での吸収が早く、糖分や添加物が一気に血液に取り込まれるため、腎臓にかかる負担は想像以上に大きくなり、糖分を多く含む飲料は血糖値を急上昇させ、腎臓のろ過機能に大きなストレスを与えるため注意が欠かせません。

まず、見直したいのが野菜ジュース、野菜不足を補う目的で飲む人も多いですが、市販の野菜ジュースには飲みやすさのために果物や甘味料が加えられている場合が少なくありません。
その結果、糖分が多くなり、血糖値や中性脂肪を上げる原因となってしまい、野菜をそのまま食べるのとは異なり、食物繊維が減っていたり、加熱や加工によってビタミンや酵素が失われているものもあります。

「野菜だから安心」と思っていても、思ったほどの栄養が得られないことが多いのです。
清涼飲料水も注意が必要になり、炭酸飲料やスポーツドリンク、加糖紅茶などは糖分が多いだけでなく、のどの渇きを感じやすく、つい「ぐびぐび」と大量に飲んでしまう傾向があります。

これにより血糖値が急上昇し、インスリンの分泌が過剰になって腎臓の糸球体を傷つける原因となってしまうので、糖分の多い飲料を習慣的に飲むことは、肥満や糖尿病だけでなく慢性腎臓病の進行を早める大きなリスクです。
「ゼロカロリー」や「ゼロシュガー」と表示された飲料も安心はできず、人工甘味料を使って甘さを出しているため糖質は控えめですが、人工甘味料が腸内細菌のバランスを乱したり、腎臓に負担をかける可能性が指摘されています。

人工甘味料は甘味を脳に認識させながら血糖値を上げにくい反面、味覚を鈍らせて甘味への欲求を強めることもあり、結果的に食生活全体が乱れやすくなるので、飲み物の健康的なイメージに惑わされず、成分表示を確認する習慣を持つことが大切です。
朝食を食べて1日の血糖値を整える
腎機能が低下してくると、毎日の食事をより計画的に管理することが大切になります。
その第一歩として意識したいのが「朝食をきちんと食べる」ことで、朝食は血糖値を安定させ、腎臓への負担を減らす一日のリズムづくりに欠かせません。

朝食を抜くと、午前中に体がエネルギー不足となり、集中力や思考力が低下しやすくなります。
さらに、空腹状態が長く続くと体は次の食事で血糖値を急激に上げてしまい、その後に急激に下げる「血糖値スパイク」が起きやすくなります。

血糖値の乱高下は血管を傷つけ、腎臓の細い血管にも大きな負担を与え、慢性的な血糖値の変動は肥満や糖尿病のリスクを高め、腎臓病の進行を早める原因ともなります。
朝食をとる際には、何を食べるかも重要になり、白米や食パン、砂糖を多く使ったシリアルなど血糖値を上げやすい高GI値の食品を主食にすると、食後に急激な血糖上昇を引き起こします。
これを防ぐには、食物繊維やたんぱく質をしっかり含むメニューがおすすめで、例えば、野菜入りの味噌汁や具だくさんのスープ、納豆や卵、ヨーグルトなどを組み合わせると、血糖値の上昇がゆるやかになります。

食物繊維は糖質の吸収をゆっくりにし、腎臓への負担を和らげる効果もあります。
また、朝に適度な水分補給を心がけることも腎臓保護に役に立ち、起床後は体内の水分が不足しているため、まずはコップ1杯の水や白湯を飲んで血液をさらさらにし、老廃物の排出を助けると良いでしょう。
腎機能の低下とタンパク質の関係
腎機能が低下していくと、食事中のタンパク質の量を調整することが重要になります。
タンパク質は筋肉や臓器、ホルモンなど体の基礎を作る栄養素である一方、分解される過程で窒素化合物(尿素やクレアチニンなど)が生じます。

これらは本来、腎臓によってろ過され尿として排出されますが、排出量が多いと腎臓に大きな負担がかかります。
腎機能が低下すると、この老廃物を十分に外へ出せなくなり、体内にたまって血液を汚す原因となり、腎臓病ではタンパク質の摂取量を減らす食事療法が行われることが多いのです。
しかし、タンパク質を過剰に制限すると別のリスクが生じてしまい、タンパク質は筋肉や骨、皮膚など体のあらゆる組織の材料であり、不足すると体の基本構造がもろくなるのです。

エネルギー不足や筋肉量の低下が起こり、骨粗しょう症やフレイル(虚弱)、サルコペニア(加齢による筋肉量減少)を招く危険があり、高齢者では筋肉量が減ると基礎代謝が低下し、腎臓を守る力も弱まるため注意が必要です。
近年は「筋腎連関(きんじんれんかん)」という考え方も注目されており、筋肉量が十分にあることが腎臓の保護につながると報告されています。
腎臓は体内でも特にエネルギー消費が大きい臓器の一つで、腎臓の細胞はエネルギーを生み出すミトコンドリアに依存しており、ミトコンドリアの機能が低下すると腎臓はエネルギー不足に陥ります。

その結果、老廃物の排出が滞るだけでなく、活性酸素が増えて腎細胞を傷つけるという悪循環が起こり、適量のタンパク質を摂ることでミトコンドリアの働きを支え、腎臓を動かすエネルギーを確保することが大切です。
タンパク質の摂取量は腎機能の状態によって適切な量が異なっていき、腎臓がまだ十分に機能している段階では、体重1kgあたり1.0g前後が目安ですが、慢性腎臓病が進行している場合は0.6〜0.8g程度に制限することもあります。
ただし、一律に減らせば良いわけではなく、低栄養や筋肉量減少のリスクを考慮した調整が必要、良質なたんぱく質(魚や鶏肉、卵、豆製品など)を中心に、腎臓専門医や管理栄養士と相談しながら、腎機能に合わせた適正量を見極めていくことが欠かせないのです。

カリウムの管理も必要になる
腎臓は、体内の余分な水分や塩分だけでなく、カリウムの排出にも重要な役割を果たしています。
カリウムは、神経や筋肉の働きを保ち、血圧を安定させるミネラルですが、腎機能が低下するとその調整が難しくなります。

通常であれば腎臓が余分なカリウムを尿として排出しますが、腎臓のろ過機能が弱まると体内にカリウムが蓄積しやすくなり、高カリウム血症を引き起こす危険があります。
高カリウム血症になると、手足のしびれや筋力低下、不整脈などが起こり、重症化すれば心停止に至ることもあるのです。

慢性腎臓病(CKD)が進行している場合は、食事から摂るカリウム量が健康な人と同じでも排出が追いつかず、血中濃度がすぐに上がってしまうため注意が必要になり、腎機能の状態に応じてカリウム摂取を制限することが勧められます。
カリウムを多く含む食品としては、果物(バナナ、メロン、キウイなど)、野菜(ほうれん草、かぼちゃ、トマトなど)、豆類、海藻、芋類などで、これらは体に良い栄養素も豊富ですが、腎臓が弱っている場合は調理法に工夫が必要になります。

野菜や芋類は細かく切って水にさらしたり、茹でこぼしてカリウムを減らす「カリウム抜き調理」を取り入れるとよいでしょう。

果物も食べ過ぎには注意し、1日1単位(約80kcal)を目安にするなど量を意識します。
ただし、カリウムは筋肉や心臓の正常な働きに欠かせないミネラルであり、むやみに制限すると逆に体調不良や筋力低下を招きます。
腎機能や血中カリウム値には個人差があるため、自己判断せずに定期的な血液検査で数値を確認し、医師や管理栄養士と相談しながら摂取量を調整していきましょう。

添加物に含まれるリンの摂り過ぎ
リンは、カルシウムとともに骨や歯を形成したり、エネルギー代謝や細胞の修復に関わったりする、体に欠かせないミネラルの一つです。
しかし、必要だからといって摂り過ぎると腎臓に大きな負担をかけることになってしまいます。

腎機能が低下している人では、リンの排泄がうまくいかなくなり、血液中のリン濃度が上昇して骨がもろくなる「腎性骨症」や血管の石灰化、心血管疾患などを招く危険が高まります。
そのため、慢性腎臓病の食事療法では塩分やタンパク質だけでなく、リンの摂取にも注意が必要です。
リンには大きく分けて二種類あり、一つは肉・魚・卵・乳製品・豆類などに自然に含まれる「有機リン」で、体への吸収率は30〜60%程度と比較的低めです。

もう一つは、加工食品に多く使われる「無機リン」で、ハム、ソーセージ、インスタント麺、スナック菓子、菓子パン、清涼飲料水などに食品添加物として含まれ、吸収率は90%以上と非常に高く、摂取した分がほぼそのまま体内に取り込まれます。
問題なのは、この無機リンの摂り過ぎであり、腎臓が健常な人でも血管や骨に悪影響を与える可能性が指摘されています。

腎機能が低下すると、余分なリンを尿から排出する力が弱くなり、血液中にリンが蓄積します。
血中リン濃度が高い状態が続くと、副甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、骨からカルシウムが溶け出して骨粗しょう症や骨折のリスクを高めます。

さらに、リンとカルシウムが血管に沈着して動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳卒中など命に関わる病気の原因にもなります。
日常生活では、加工食品や外食に偏らないことが最も効果的な対策になり、ハムやソーセージ、スナック菓子、インスタント麺などの頻度を減らし、食材はなるべく生鮮食品を選ぶことがポイントです。

料理をするときも、下ゆでや水にさらすことでリンを減らすことができ、腎臓病でリン制限が必要な場合は、医師や管理栄養士と相談しながら食品選びや調理法を工夫することが大切になっていきます。
糖質の制限も必要になる
腎機能が低下してくると、糖質の摂取量にも注意が必要になっていきます。
糖質は体の大切なエネルギー源ですが、摂り過ぎると血糖値が急上昇し、インスリンが大量に分 泌されます。

インスリンは、血糖を下げる一方で、腎臓の糸球体に圧力をかけて傷つける原因となり、長期的には腎機能の低下を進めてしまうのです。
精製された白米や白パン、砂糖を多く使ったお菓子や甘い飲み物は血糖値を急激に上げやすく、腎臓への負担を大きくします。
糖質を控えるといっても、まったく摂らない極端な制限は避ける必要があります。
糖質は脳や体を動かす基本的なエネルギー源であり、極端に減らすと筋肉量の減少や低血糖、強い疲労感、集中力の低下などを招く可能性があります。

また、体は糖質不足を補おうとして脂肪や筋肉を分解するため、腎臓が老廃物を処理する負担がかえって増えてしまうこともあるのです。
大切なのは糖質の「質」と「量」に配慮することで、主食には食物繊維を多く含む玄米や雑穀米、全粒粉パンなど低GI(血糖値を上げにくい)食品を選びましょう。

野菜や海藻、きのこ類を一緒に摂ると、食物繊維が糖質の吸収をゆるやかにし、血糖値の急上昇を防ぎます。
甘いお菓子やジュースなど精製された糖質はできるだけ控え、間食が必要なときは果物ならリンゴなど血糖値を上げにくい種類を少量にとどめると安心です。

また、糖質制限を行う際は、タンパク質や脂質のバランスにも気をつける必要があり、タンパク質を過剰に摂ると腎臓に負担をかけ、脂質の摂り過ぎも血管を傷つける原因になるためです。
腎機能や生活習慣、体重、活動量に応じて、自分に合った糖質の量を見極めていきましょう。

まとめ
腎臓は沈黙の臓器だからこそ、悪くなってから慌てるのではなく、元気なうちから守る意識が大切です。
本記事では、食物繊維を軸にした腸からのケア、塩分や糖質・脂質のとり過ぎを抑える工夫、カリウムやリン、亜鉛などのミネラルとの賢いつき合い方、水分や飲み物の選び方、朝食やタンパク質のとり方のポイントを紹介してきました。

完璧を目指す必要はなく、まずは調味料を少し減らす、市販品や清涼飲料水の頻度を見直す、腎臓がよろこぶ間食を一つ取り入れるなど、小さな一歩からで十分です。

体は今日食べたものでつくられ、腎臓もまた毎日の選択に正直に応えてくれ、未来の自分のために、今日の一食、今日の一杯から優しい選び方を意識してみてください。
この記事が、その第一歩のヒントになればうれしく、あなたの腎臓がこれからも静かに、そして力強く働き続けられるように、無理なく続けられる習慣を一緒に育てていきましょう。


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