目次
はじめに
鉄分不足は、特にシニア世代にとって見逃されやすい体のサインになり、貧血やだるさ、立ちくらみなどが続いても「年のせい」と片づけてしまう人も少なくありません。
しかし、鉄は体のすみずみに酸素を運ぶ大切な栄養素であり、体のエネルギー代謝や免疫機能、脳の働きにも深く関わっています。

鉄分が不足すると、体は常に酸素不足のような状態になり、疲れや集中力の低下、免疫力の低下など、日常生活に影響を及ぼしてしまいます。
しかも、鉄の不足は少しずつ進行するため、気づいた時には慢性的な貧血になっていることもあります。
毎日の食事、腸や胃の健康、生活習慣など、鉄の吸収や利用には多くの要素が関係しており、単に鉄を「摂る」だけでは解決できません。
鉄分不足の原因を見極め、体の中で鉄をしっかり働かせるための実践的なポイントを紹介していきます。
鉄分不足を解消していく
食事やサプリメントなどで鉄分をしっかりととっているはずなのに、体調や変化がないからとすぐにやめてしまう方もおられます。
鉄分の値を解消していくためには、すぐに数値が改善することはなく、Hbの値は2〜3ヶ月、フェリチンに関しては数年かかることもあるのです。

今日から鉄分不足を解消していくために
1日の摂取量を知っておく
鉄分は毎日コツコツと摂取することが大切で、成人女性に推奨されている1日の鉄分摂取量は、およそ10.5mgとされています。

シニア女性の場合、閉経後であっても7.5mg程度は必要とされており、体の機能維持や疲労予防のために欠かせません。
しかし実際には、毎日の食事からこの目安量を安定して摂ることは意外と難しく、意識していても不足しがちで、野菜中心や少食傾向の方では、必要量に届かないことが多く見られます。

鉄分単体ではなく、ビタミンCや葉酸などの吸収を助ける栄養素も一緒に摂れるものを、日々の生活に無理なく取り入れることで、鉄分不足を防ぐことができます。
タンパク質不足も関係する
鉄分とタンパク質は、実は密接な関係にあり、体内で酸素を運ぶヘモグロビンは、鉄分とタンパク質の両方から作られているため、どちらが不足してもスムーズな合成ができません。

非ヘム鉄は吸収率が低いため、タンパク質と一緒に摂取することでその吸収を高めることが知られています。
タンパク質が不足していると、せっかく鉄分を摂っても効率よく活用されず、鉄不足に拍車をかけてしまうのです。
タンパク質は筋肉や臓器、酵素など、体のあらゆる部分を構成する重要な栄養素でもあり、鉄分だけに意識を向けるのではなく、バランスよくタンパク質も取り入れることが健康維持の鍵となります。

鉄分を意識した食生活では、肉や魚、大豆製品、卵など、タンパク質が豊富な食品を組み合わせて摂ることが大切になるのです。
ピロリ菌がいる場合は早期治療
鉄分を意識してしっかり摂っているのに、なかなか改善されない貧血がある場合、見逃せないのが「ピロリ菌」の存在です。
いつも胃が痛い、胃もたれしやすい、なんとなく胃の調子が悪いという方は、まず鉄分を補う前に胃の検査を受けて見ることが優先されることも。

ピロリ菌は胃に感染すると慢性的な胃炎を引き起こし、鉄の吸収力を大きく下げてしまい、一度感染すると自然に消えることはなく、除菌治療を行わなければ体内に居続けてしまうのです。
シニア世代は感染率も高く、気づかないうちに鉄分の吸収を妨げられているケースも多いです。
胃に不快感や違和感がある方は、「まずは胃の中を整える」という視点で、ピロリ菌のチェックを受けていきましょう。
甲状腺機能異常の場合も
鉄分不足による貧血の症状とよく似たものに「甲状腺機能異常」による不調があります。
疲れやすさ、だるさ、無気力感などは、どちらの状態でも共通して見られるため、見分けがつきにくいことがあります。

甲状腺ホルモンは、全身の代謝をコントロールする重要なホルモンであり、赤血球の産生にも関わり、甲状腺の機能が低下すると、赤血球がうまく作られず貧血が起こりやすくなるのです。
ある調査では、甲状腺に異常がある人のうち10〜40%に貧血が見られたという報告もあり、決して珍しいことではありません。
橋本病(甲状腺機能低下症)やバセドウ病(甲状腺機能亢進症)などの自己免疫性の病気では、貧血の症状が併発しやすい傾向にあるので、鉄分を摂っても改善しない場合は、甲状腺の検査も視野に入れてみましょう。
腸に異常がある場合も注意
鉄分をしっかり摂っているのに貧血が改善しない場合、腸の状態も確認が必要で、近年増加傾向にある炎症性腸疾患(IBD)には、クローン病や潰瘍性大腸炎といった病気が含まれます。
これらは腸の壁に慢性的な炎症を起こし、鉄や栄養素の吸収を妨げるだけでなく、出血を伴うこともあるため、鉄分不足がさらに進んでしまうのです。

過敏性腸症候群(IBS)も要注意、これはストレスや生活習慣の乱れ、便秘や下痢などをきっかけに腸が過敏に反応するもので、日常生活の不調と深く関係しています。
IBS自体は炎症を伴わないものの、腸内環境の乱れが続くと、鉄の吸収にも悪影響を及ぼします。
腸に違和感がある、便通が不安定といったサインを見逃さず、必要であれば医師の診断を受け、生活習慣の見直しや腸のケアも並行して行うことが大切です。
胃腸薬の常用も影響する
ストレス社会といわれる現代において、胃の不調を訴える人もおり、ストレスによる胃痛や胃もたれ、胃炎などの症状に対しては、胃酸の分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬やH2ブロッカーなど)が処方されることがあります。

これらの薬は症状の緩和に効果的ですが、長期的に服用することで思わぬ影響が出ることもあります。そのひとつが「鉄の吸収低下」です。
鉄は、動物性食品に含まれるヘム鉄が胃酸の働きによって効率よく吸収されるのですが、胃酸分泌が抑えられることで鉄がイオン化されにくくなり、小腸での吸収率が低下してしまうのです。
つまり、せっかく鉄を含む食品を食べていても、吸収されずに体外へ流れてしまうリスクがあります。

また、便秘薬の常用も注意が必要になり、便秘そのものが腸内環境の悪化を招き、鉄の吸収を妨げる原因になりますが、便秘薬の影響で腸の働きが過剰に刺激されると、栄養素がじゅうぶんに吸収される前に排出されてしまうこともあるのです。
薬による胃腸の調整は必要な場合もありますが、根本的には日常生活の見直しが大切で、ストレスをため込まない工夫、食生活の改善、適度な運動、十分な睡眠といった生活習慣を整えることで、薬に頼りすぎない体づくりが目指せます。
出血を伴う疾患がある
鉄分をしっかり摂っているのに、なかなか貧血が改善されない場合は「出血を伴う疾患」の可能性も考慮する必要があります。
鉄分は体内で再利用されるものの、出血によって失われると不足分を補う必要あり、胃炎や消化器系の慢性的な炎症、痔、潰瘍などの消化器系疾患では、少量でも継続的な出血があると鉄分は失われ続けます。

また、女性では子宮筋腫や子宮内膜症などによる過多月経も、鉄分不足の大きな要因となり、これらの病気があると、いくら鉄を摂っても「出ていく量」が多いため、補うだけでは間に合わなくなるのです。
もし長引く貧血や体調不良がある場合は、まず出血を伴う病気が隠れていないかを医療機関で確認し、根本的な治療を行うことが優先されます。
サプリメントで補っていく
鉄分は本来、日々の食事からバランスよく摂取するのが理想です。
しかし、食が細くなっていたり、胃腸の調子が不安定だったりするシニア世代にとっては、毎日十分な鉄分を食事だけで補うのは難しいこともあります。

そんな時、サプリメントで補うこともひとつの選択肢、無理に食べて栄養バランスを崩すよりも、必要な栄養素を効率よく補える手段として、鉄サプリは役立ちます。
鉄サプリにはいくつかの種類があり、まず「二価鉄(フェロ鉄)」タイプは、鉄の吸収がよく、ビタミンCと一緒に摂取するとさらに吸収率が高まります。
胃腸への刺激を避けたい人には「ヘム鉄」タイプもあり、ヘム鉄は動物性食品に含まれる鉄で、体内のヘモグロビンと同じ構造をしているため、吸収されやすく、胃に優しいのが特長です。
さらに「キレート鉄」と呼ばれるタイプ、これは鉄がアミノ酸と結合した形で、吸収率が高いとされます
しかし、日本では食品としては認可されていないため、サプリとして使う場合は海外製品が主流なので、信頼できる製品を慎重に選ぶことが大切になります。
鉄サプリは「何でもいい」というものではありませんので、体質や体調、胃腸の強さなどに応じて、自分に合った種類を選ぶことが重要です。
サプリなどが苦手な方は
鉄分のサプリメントは便利な補給手段ですが、中には「胃腸が弱くてサプリを飲むと気分が悪くなる」「薬や錠剤そのものが苦手」という方もいます。
鉄欠乏の方の中には、もともと胃腸に違和感や不調を抱えていることが多く、そこにサプリメントを加えることで、かえって症状が悪化してしまうこともあるのです。

そのため、無理に飲み続けるよりも、他の方法で鉄分を補う選択肢も視野に入れることが大切になります。
サプリメントや内服薬が体に合わない方には、病院での「鉄注射」という方法があり、これは医師の管理のもと、直接鉄分を体内に投与するもので、胃腸への負担が少ないというメリットもあるのです。
重度の鉄欠乏性貧血の方や、内服での改善が難しい場合は、無理をせず、自分に合った方法で鉄分を補給するためにも、一度医師に相談してみることをおすすめします。
鉄分補助食品も増えている
かつては鉄分を補うといえばサプリメントが主流でしたが、近年では鉄分を手軽に取り入れられる「補助食品」が数多く登場しています。

強化された飲料やヨーグルト、スナック菓子、シリアルバー、グミなど、日常的に無理なく取り入れられるものが増えてきました。
中にはお菓子感覚で食べられるものや、普段の飲み物を鉄入りに置き換えるだけの手軽な製品もあり、鉄分補給が特別なことではなくなってきています。
これらの補助食品は、味や形状のバリエーションが豊富なので、自分に合ったものを楽しみながら選ぶことができるのです。
「サプリメントはちょっと苦手」という方でも、これなら無理なく続けられるはずです。

鉄分は継続して摂ることが大切ですから、気分やライフスタイルに合わせて、自分にぴったりの方法を見つけ、楽しみながら、日々の鉄分補給を習慣にしていきましょう。
鉄の過剰摂取になることも
鉄分は不足すると貧血などの体調不良を招きますが、反対に摂りすぎても問題を引き起こすことがあります。
サプリメントでの補給は手軽に鉄分を摂取できる一方、体に必要以上の鉄を取り込んでしまうリスクもあり、鉄分は体にとって必要不可欠な栄養素ですが、過剰になると体内で処理しきれず、臓器に沈着してしまいます。
例えば、肝臓に鉄が蓄積すると鉄過剰による肝炎を起こすことがあり、慢性的なダメージにつながります。

また、腸の粘膜に鉄が沈着すると、粘膜細胞が傷つき炎症を引き起こすこともあるのです。
このように、鉄は多すぎても体に悪影響を及ぼすため、補助としてのサプリメントは「不足している時」に限定して活用する必要があるのです。
定期的な血液検査で自分の鉄の状態を把握し、必要な分だけ補うことが大切です。鉄分の過剰摂取にならないよう、正しい知識を持って上手に鉄分を補給していきましょう。
まとめ
鉄分不足を解消していくには、「摂る」だけでなく「吸収し、活かす」ことが大切です。
鉄はヘモグロビンを作り、全身に酸素を届ける重要な栄養素ですが、改善には時間がかかり、食事ではタンパク質やビタミンCを組み合わせ、吸収を高める工夫をしましょう。

胃腸の不調やピロリ菌、甲状腺異常、腸の炎症、慢性的な出血などが鉄吸収を妨げることもあるため、原因を見極めることが必要です。
サプリメントや補助食品も上手に活用し、無理なく継続することがポイントですが、過剰摂取には注意し、定期的に血液検査で状態を確認しながら、自分に合った方法で鉄分を補っていきましょう。

最後まで見ていただきありがとうございました。
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